「控除があるうちは繰り上げ返済しないほうがいい」は本当?残高4,946万円で計算したら、我が家には当てはまりませんでした
住宅ローンの繰り上げ返済を調べると、ほぼ必ずこう書かれています。
「住宅ローン控除を受けている期間中は、繰り上げ返済しないほうが得」
私もそう思っていました。ところが我が家の実数字で計算してみたら、この前提が成立していませんでした。
理由は、身も蓋もない話です。借りすぎていて、控除の枠が余っていたからです。この記事では、源泉徴収票と返済予定表の実額で、その計算過程を全部公開します。
結論|「控除中は繰り上げ返済するな」には、前提条件がある
先に結論です。あの一般論が成り立つのは、控除の枠を使い切っている人だけです。
住宅ローン控除は「年末残高 × 控除率」で計算した枠と、「自分が実際に納めた税金」の、小さいほうが上限になります。納めていない税金は戻ってきません。
つまり枠のほうが大きい人は、残高が減っても控除額が変わりません。繰り上げ返済しても失うものがない、ということです。
そして「枠が余る」のは、たいてい借りすぎている人です。
残高が大きいほど枠は大きくなりますが、納める税金は年収で決まります。残高だけが大きくても、戻る税金は増えません。我が家がまさにこれでした。
我が家の実数字|枠が307,600円も余っていた
2025年分の源泉徴収票と、返済予定表の数字です。
| 項目 | 金額 | 出どころ |
|---|---|---|
| 年末のローン残高 | 約49,460,000円 | 返済予定表 |
| 控除率(2020年入居) | 1% | 制度 |
| 控除の「枠」 | 494,600円 | 残高×1% |
| 実際に控除された額 | 187,000円 | 源泉徴収票の実額 |
| 余っている枠 | 307,600円 | 494,600 − 187,000 |
控除の枠は494,600円あるのに、実際に戻ったのは187,000円。枠の4割も使えていません。
理由は住宅ローン控除でいくら戻った?に詳しく書きましたが、我が家は連帯債務で「夫婦2人分の控除が受けられる」と説明されて組みました。ところが妻が育児で一時退職し、いまはパート勤務。納める税金がないと、控除枠は使えません。
3,076万円まで繰り上げ返済しても、控除額は1円も減りません
ここが今回いちばん驚いた計算です。
控除額が減り始めるのは、枠が納税額を下回ってからです。我が家の場合、187,000円 ÷ 1% = 残高1,870万円まで減ったときが分岐点になります。
| 残高 | 控除の枠 | 実際の控除額 |
|---|---|---|
| 4,946万円(現在) | 494,600円 | 187,000円 |
| 3,000万円 | 300,000円 | 187,000円(変わらず) |
| 1,870万円 | 187,000円 | 187,000円(ここが分岐点) |
| 1,000万円 | 100,000円 | 100,000円(ここから減る) |
現在の残高4,946万円から分岐点の1,870万円までは、3,076万円あります。つまり3,076万円ぶん繰り上げ返済しても、控除額は187,000円のまま変わりません。
3,000万円を繰り上げ返済できる家計なら、そもそもこの記事は読んでいないと思います。現実的な金額では、控除は一切減らないということです。
では、繰り上げ返済の効果はいくらか
控除が減らないなら、繰り上げ返済したぶんだけ得になります。残高4,946万円・金利1.275%・残り29年で計算しました(期間短縮型)。
| 繰り上げ返済額 | 短縮される期間 | 減る利息 | 投じた額に対して |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 4ヶ月 | 222,298円 | 0.44倍 |
| 100万円 | 8ヶ月 | 441,353円 | 0.44倍 |
| 200万円 | 1年5ヶ月 | 869,850円 | 0.43倍 |
| 300万円 | 2年1ヶ月 | 1,285,720円 | 0.43倍 |
100万円を繰り上げ返済すると、利息が441,353円減り、期間が8ヶ月縮みます。100万円を投じて44万円戻ってくる計算です。悪くありません。
ただし、次の章が本題です。
それでも我が家が繰り上げ返済していない3つの理由
計算上は繰り上げ返済したほうが得です。それでも、我が家は一度もしていません。正直に理由を書きます。
① 手元の現金がなくなるほうが怖い
繰り上げ返済したお金は二度と戻ってきません。金利1.275%を減らすために現金を手放して、その直後に修繕や病気や失職があったら、借り直すことはできません。
我が家は妻が育児で一時退職して、実質1馬力になった経験があります。収入は簡単に減ると身をもって知りました。金利1.275%は、現金を持っておくための保険料だと考えています。
② 教育費のピークがこれから来る
子どもが小さいうちは、教育費はまだ本格化していません。いちばんお金がかかるのはこれからです。その時期に手元資金がない状態は避けたいと考えています。
③ 団信の保障が減る
意外と見落とされがちですが、繰り上げ返済すると団体信用生命保険の保障額も減ります。団信は「万一のときに残高がゼロになる」保険なので、残高を減らすことは保険金額を減らすことと同じです。
繰り上げ返済は「損得」だけの話ではありません。
利息は確実に減ります。でも同時に、手元の現金・将来の選択肢・団信の保障が減ります。我が家は借りすぎている自覚があるからこそ、現金を持っておくことを選んでいます。
あなたの家はどちらか|源泉徴収票の2つの数字で分かります
「控除中は繰り上げ返済しないほうがいい」が自分に当てはまるかは、2つの数字を比べるだけで判定できます。
| 比べるもの | どこを見るか |
|---|---|
| A:控除の枠 | 年末のローン残高 × 控除率(2022年以降の入居なら0.7%、それ以前は1%) |
| B:実際に控除された額 | 源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除の額」 |
A > B なら、枠が余っています。繰り上げ返済しても控除は減りません(我が家はこれ)。
A = B なら、枠を使い切っています。繰り上げ返済すると、その分だけ控除も減ります。一般論が当てはまるのはこちらです。
我が家はA(494,600円)がB(187,000円)を大きく上回っていました。控除を理由に繰り上げ返済をためらう必要は、まったくなかったということです。
正直に言うと、繰り上げ返済より効くものがあります
ここまで繰り上げ返済の話を書いてきましたが、効果の大きさで言えば、比べものにならないものがあります。
| 打ち手 | 減る総返済額 | 必要な現金 |
|---|---|---|
| 100万円の繰り上げ返済 | 441,353円 | 100万円 |
| 金利を0.575%下げる(借り換え) | 約452万円 | 0円(諸費用は要) |
桁が違います。100万円の現金を投じて44万円。金利を0.575%下げれば452万円です。試算の詳細は1.275%になった今、借り換えるべき?に載せています。
現金を手放す前に、金利を見てください
繰り上げ返済は手元の現金を減らして利息を減らす方法です。一方、借り換えは現金を減らさずに総返済額を下げられます。
我が家の試算では、100万円の繰り上げ返済で減るのは441,353円。金利を0.575%下げた場合は約452万円です。順番として、先に金利を確認するほうが合理的だと考えています。私は借入のとき比較を一切せず、それが最大の後悔になりました。
※無料。我が家が利用したサービスではありません。借り換えを比較する手段の一例として紹介しています。特定の金融機関を推奨するものではありません。
よくある質問
住宅ローン控除の期間中は、繰り上げ返済しないほうがいいのですか?
控除の枠を使い切っている場合だけ、その通りです。控除額は「年末残高×控除率」と「実際に納めた税金」の小さいほうが上限になります。我が家は枠が494,600円あるのに実際の控除は187,000円で、307,600円も余っていました。この場合、繰り上げ返済しても控除額は変わりません。
自分の家がどちらか、どうやって判定しますか?
2つの数字を比べるだけです。A=年末残高×控除率(2022年以降の入居は0.7%、それ以前は1%)、B=源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除の額」。A>Bなら枠が余っているので、繰り上げ返済しても控除は減りません。A=Bなら使い切っているので、減ります。
100万円繰り上げ返済すると、いくら得ですか?
我が家の条件(残高4,946万円・金利1.275%・残り29年・期間短縮型)では、利息が441,353円減り、返済期間が8ヶ月縮む計算です。投じた100万円に対して約0.44倍が戻る計算になります。金利が高いほど、また残り期間が長いほど効果は大きくなります。
繰り上げ返済のデメリットはありますか?
3つあります。①手元の現金が減る(繰り上げ返済したお金は戻せません)、②将来の選択肢が減る(教育費や修繕のピークがこれから来ます)、③団信の保障が減る(団信は残高がゼロになる保険なので、残高を減らすと保険金額も減ります)。我が家はこの3つを理由に、計算上は得でも実行していません。
繰り上げ返済と借り換え、どちらを先にすべきですか?
効果の大きさで言えば借り換えが先だと考えています。我が家の場合、100万円の繰り上げ返済で減るのは441,353円ですが、金利を0.575%下げた場合の総返済額の差は約452万円で、桁が違います。しかも借り換えは手元の現金を減らしません(諸費用は必要です)。
期間短縮型と返済額軽減型、どちらがいいですか?
利息を減らす効果は期間短縮型のほうが大きいです。この記事の試算も期間短縮型で計算しています。ただし返済額軽減型は毎月の負担が下がるので、家計に余裕がない場合はこちらが安全です。我が家のように収入が減る可能性を経験していると、月々の負担を下げる選択にも合理性があると感じます。
まとめ
・「控除中は繰り上げ返済するな」が成り立つのは枠を使い切っている人だけ
・我が家は枠494,600円に対して控除187,000円。307,600円余っていた
・3,076万円まで繰り上げ返済しても控除額は変わらない計算だった
・100万円の繰り上げ返済で利息441,353円減・期間8ヶ月短縮
・それでも我が家がしないのは現金・教育費・団信の3つが理由
・判定は源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除の額」と残高×控除率を比べるだけ
調べてみて分かったのは、一般論は「平均的な借り方をした人」に向けて書かれているということでした。借りすぎた我が家には、そのまま当てはまりませんでした。
自分の家の数字で計算し直すこと。それだけで、判断は変わります。
※本記事の金額は我が家の実際の源泉徴収票・返済予定表に基づく実額です。繰り上げ返済の効果は元利均等返済によるモデル計算で、実際の条件は金融機関により異なります。住宅ローン控除の要件・控除率は入居年により異なります。特定の金融機関を推奨するものではなく、金融商品の助言を目的としたものでもありません。
住宅ローンの全記録を、1本にまとめました
繰り上げ返済の判断に必要な数字を含め、我が家の住宅ローンの全記録を1枚の表に集約し、「私がもう一度住宅ローンを組むなら、こうする」まで書いた保存版のnoteです。借入5,900万円の内訳/金利0.625%→1.275%で利息がどう増えたかの試算/連帯債務×住宅ローン控除の損得/借入前に使える「危険度セルフ診断チェックリスト10項目」を収録しています。
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